《LGBTQ+の理解を深める》セクシュアリティの構成要素 2/4 【性自認】〔心の性〕の解説

LGBTQ+

・この項では「性自認(gender identity / ジェンダー アイデンティティ)」〔心の性〕の解説をしていきます。

セクシュアリティの構成要素

アメリカ心理学会(APA)では現在『セクシュアリティ/sexuality』の構成要素は4つとなっています。

  1. 生物学的性(biological sex)
    日本では〔体の性〕と併記されています。
  2. 性自認(gender identity)
    日本では一般的に〔心の性〕と併記されています。
  3. 性的指向(sexual orientation)
    日本では一般的に〔好きになる性〕と併記されています。
  4. ジェンダー役割(gender role)
    ※日本での一般的なセクシュアリティの構成要素は「性表現」となっています。

性自認(gender identity)〔心の性〕

性自認gender identity / ジェンダーアイデンティティ)とは『心の性』と言われており、「自分が感じている性」「自分が認識している性」です。

※ 性自認を「心の性」と表現していますが厳密には違っています。〔≒〕

性自認は、生物学的の性(体の性)とは関係がありません。

心の性とは

では、「心の性」「自分が感じている性」とはどんなものなのでしょうか

セクシュアリティの構成要素のうちの一つ「生物学的性(体の性)」は生物学的・医学的に生まれた時にほぼ決定されます。

それに比べ「心の性」とりわけ『自分が感じている性』『自分が認識している性』と言われて説明できる方は多くないと思います。

ジェンダー(gender)と言う概念が「性は社会的・文化的に作られるもの」と定義しているので、性自認 / gender identity / ジェンダーアイデンティティを直訳すると「社会的・文化的に作られる性と、自己との同一性」です。

同一性 / identity(自己同一性)、心理学や社会学の用語・概念で、「一貫した(変わらない・不変な)自身の個性・自己意識(パーソナリティー)」で、言わば時期や状況、環境に左右されない「自分は自分」という、確立された自己意識の事です。

では、性自認はというと、『社会的に期待される性(役割として期待される性・役割として押し付けられる性)』と『自分の自己意識(パーソナリティー)での性(自分が感じている性・役割を演じる性・表現する性)』の同一性と言うことになります。

ここが厳密に言うと「性自認=心の性」とは言えないところです。(性自認 ≒ 心の性)

心の性とジェンダー

ではどう言ったものが「社会的・文化的に作られる性(ジェンダー)」と言えるのでしょうか

みなさんは普段意識していないと思いますが、常にジェンダー概念の中で生活しています。いわゆる社会的な「男らしさ」「女らしさ」の中でです。

「箸でご飯を食べる時、意識して右手(左手)で持っていますか?」イメージ的にはこんな感じで、ジェンダーも普段はあまり意識していないのです。

ほとんどの方は「生まれた時」の外見的(体の性)判断から、「男の子」「女の子」として親の社会的概念のジェンダー枠に収められます。「男の子は青い服」「女の子だからピンクの服」と言ったような概念です。

ピンクの服を着た子に「かわいい男の子ですね」と声はかけないと思います。「女の子に見せたいから」「女の子に見られたいから」ピンクの服を着せたり・着たりするのです。

これは社会の一般概念が「男の子→青」、「女の子→ピンク」と言うように確立されいて、発信する側と受け取る側が「=(イコール)」な状態です。

こうして生まれてすぐに「男の子」「女の子」としてジェンダーの枠のなかで社会から期待されている(押し付けられている?)性を演じていると、「これは男の子やること」「これは女の子のやること」とか「これは男の子の服装」「これは女の子の服装」と言う概念が年齢と共に自己(自我)の中で確立していきます。

実際、乳幼児の頃は「自我」も(さほど)ないですから「男女」と言う概念はほとんど無いであろうと推測されます。赤ちゃんが一番最初に遭遇する男女の性は「お父さん」「お母さん」、兄弟姉妹がいれば、「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」「弟」「妹」という、意識をしない『性概念』が徐々に生まれてくるわけです。

こう言った事象は、公共におけるトイレや、遊び、服装、読み物、道具、学校、友人関係及びそれに類するコミニュティ(グループ)など様々なものがあり、自己の成長と共に徐々に確立されていく『性概念』が、「自分が思う性・自分が考える性・自分が感じる性」といった『心の性』につながっていきます。

性自認は、「社会から求められている役割の性(社会的・文化的な性=ジェンダー)」と、自身の心の性」の両方を意識した時における、社会的性概念から見た『自分の心の性の立ち位置』の自己認識をする事と考えています。

ですから、LGBTQ+のカテゴライズは社会的な観点(社会的・文化的なジェンダー価値観)から見た「自分の性の位置を示している」分類であり、性自認(gender identity)において重要な役割を果たしていると言えるでしょう。

性自認の分類と呼称

【性自認】
gender identity
【分類】
心の性と体の性が
一致している
シスジェンダー
(Cisgender)
心の性と体の性が
一致していない
トランスジェンダー
Transgender) ※1

トランスセクシュアル
Transsexual/TS) ※2
心の性と体の性が
わからない
決まっていない
探している

(あえて)決めていない
クエスチョニング
Questioning)
※3
心の性と体の性が
男性でも女性でもある

両性
男性と女性の中間

中性
男性の時も女性の時もある

不定性
男性でも女性でもない

無性
Xジェンダー
(Xgender)
心の性と性表現が注1
男性でも女性でもない。

無性
男性・女性の枠にとらわれない
ノンバイナリー
(non-binary)

注1 ここでは性表現という表記を使用します。
※1 トランスジェンダーは性同一性障害ではありません。
※2 「トランスセクシュアル(TS)」は、「体の性と心の性が一致していなく性別適合手術を望む状態・受けた状態」と定義され、医学用語で言う【性同一性障害〔GID(Gender Identity Disorder)〕】として扱われて時代があった。現在は性同一性障害が障害と認識されなくなり(アメリカの精神医学会では、性同一性障害→性別違和と変更)、「トランスセクシュアル」と言う呼称は(いまだ使う人はいるが)実情の認識と差異が発生しているため使われなくなってきており、「トランスジェンダー」の一部としての認識に変わりつつある
※3 クエスチョニングは性的指向・性表現でも使われる広義な概念です。

Xジェンダーは日本独自の表記で、海外だとノンバイナリーが一番近い表記ですが同じではありません。〔≒〕ノンバイナリーは性表現の概念も含みます。

Xジェンダーは、性自認において、男性・女性の概念を含む「両性」「不定性」、男性・女性の概念を含まない「無性」がある(中性は判断に悩むが含まない方だと考える)

ノンバイナリーは、性自認性表現(性役割の方がおさまりがいい気がする…)で「(男女と言う性二元制では)どちらにも属さない」意味から「枠にとらわれない」という表現がされています。

どちらにも属さない意味でXジェンダーの「無性」も該当しますがノンバイナリーは性表現も含むので厳密には違います。しかし、イメージとして大きな差異はないので自認での呼称はどちらでもよいと考えます。

【性自認】の分類上の呼称を明記しておきます。

体の性
身体的性
性自認】分類上の呼称
男性男性シスジェンダー男性
(Cisgender)
女性女性シスジェンダー女性
(Cisgender)
男性女性トランスジェンダー女性
Transgender)
MtF
[male to female]
女性男性トランスジェンダー男性
FtM
[female to male]
男性
女性
わからない
決まっていない
探している
クエスチョニング
Questioning)
男性
女性
男性でも女性でもある。
両性
男性と女性の中間。
中性
男性の時も女性の時もある。
不定性
男性でも女性でもない。
無性
Xジェンダー
(エックスジェンダー)
MtX
FtX
[male to X]
[female to X]
 注2

男性
女性
男性でも女性でもない。
無性
男女の枠にとらわれない性
ノンバイナリー
(non-binary)
 注3
男性
女性
様々な性
上記の性自認に該当しない
様々な性

+”(プラス)
[LGBTQ+]など
s
[LGBTQs]など
4
 分類上では男性・女性と言う表記はしません。そもそも分類できません。
2 Xジェンダーは日本独自の表記です。海外だとノンバイナリーが一番近い表記(≒)
3 ノンバイナリーは性自認・性表現を含みます。
4 ”+”や”s”は体の性・性自認・性的指向・性表現を含み、分類されない様々な性の人たちと言う意味で、どちらを使っても同じ意味です。

分類上の表記は、体の性より『心の性』が尊重されます。

※ DSDの方の生物学的性の性〔体の性〕は様々です。DSDの方の性自認〔体の性〕〔心の性〕は各個人の考え・認識が尊重されます。(尊重されるべきです)

まとめ

上で書いた通り『性自認』に関しては『心の性』とよく併記されますが、厳密に言えば認識的にちょっとだけ違っています。〔性自認≒心の性〕

まあ、ほんの少しの解釈の違いなので「性自認=心の性」でも何ら問題はないと考えます。

性自認は、社会的概念から見た(自分がどのカテゴリーにいるのかの)性の立ち位置でしかなく、そもそもが多種・多様・多彩ですから、人と違っていることは当然です。

僕が自認した性も、あなたが自認した性も、みんなそれぞれが「普通」なのです。


自分らしく、それがいい

Akabeko3

別記事:【セクシュアリティ】 とは
別記事:セクシュアリティの構成要素 1【生物学的性】
この記事:セクシュアリティの構成要素 2【性自認】
別記事:セクシュアリティの構成要素 3【性的指向】
別記事:セクシュアリティの構成要素 4【性表現】【ジェンダー役割】

追伸

  • 「説明が間違ってるよー」
  • 「ここもうちょっと説明が足りない」
  • 「誤認あるよー」
  • 「解釈が違っている」等

ご指摘・ご意見・ご要望・アドバイス等がありましたら、下記Twitterまでお願いします。もちろん異論反論もOKです。ディベート好きです。お友達も募集中です♪

Twitter:アットマークakabeko_sun

タイトルとURLをコピーしました