《LGBTQ+の理解を深める》セクシュアリティの構成要素 3/4 【性的指向】〔好きになる性〕の解説

LGBTQ+

・この項では「性的指向(Sexual orientation / セクシュアル オリエンテーション)」〔好きになる性〕の解説をしていきます。

セクシュアリティの構成要素

アメリカ心理学会(APA)では現在『セクシュアリティ/sexuality』の構成要素は4つとなっています。

  1. 生物学的性(biological sex)
    日本では〔体の性〕と併記されています。
  2. 性自認(gender identity)
    日本では一般的に〔心の性〕と併記されています。
  3. 性的指向(sexual orientation)
    日本では一般的に〔好きになる性〕と併記されています。
  4. ジェンダー役割(gender role)
    ※日本での一般的なセクシュアリティの構成要素は「性表現」となっています。

性的指向

セクシュアリティの構成要素として【性的指向】という概念がありますが、(現在は)性的指向の一部として扱われる【恋愛的指向】(性的なものを含まない)概念もあります。

性的指向 (Sexual orientation / セクシュアル オリエンテーション)」と共に「恋愛的指向(Romantic orientation / ロマンティック オリエンテーション)」の解説したいと思います。

性的指向(Sexual orientation)とは

性的指向とは「性的対象(性的感情)がどの性に向くのか」を示す概念です。

  1. 狭義の「性的指向」は(本能的・自然的な)性的感情がどの性に向くのかの概念です。
    ※ 主に「異性愛」「同性愛」を範囲とした指向です。
  2. 広義の『性的指向』は性的対象(性的感情がどの性に向くのか)恋愛対象(恋愛感情がどの性に向くのか)の両方を含む概念としてとらえられています。
    ※ 『性的感情・恋愛感情』共に「すべての性」を範囲とした指向です。

現在の性的指向の概念は広義の性的指向が一般的な為、【好きになる性】と表記される場合が多いです。

性的指向は、生物学的な性(体の性)とは関係がありません。

性的指向の分類と呼称

【性的指向】分類上の名称
性的対象が異性
異性愛
ヘテロセクシュアル
(heterosexual)
性的対象が同性
同性愛

(性自認)女性 ➡ 女性
女性の同性愛者
(性自認)男性 ➡ 男性
男性の同性愛者
ホモセクシュアル
(homosexual)※1
レズビアン
Lesbian)
ゲイ
Gay)
性的対象が男性・女性の両方
両性愛
バイセクシュアル
Bisexual)
性的対象が男性や女性にとらわれず
すべての性に向く人

全性愛
パンセクシュアル
(Pansexual)
性的感情を抱かない
無性愛
アセクシュアル
エイセクシュアル
(Asexual)
性的対象が女性
(性自認を問わず)
ウーマセクシュアル
(Womasexual)
ジニセクシュアル

(Ginisexual)
性的対象が男性
(性自認を問わず)
マセクシュアル
(masexual)
アンドロセクシュアル

(Androsexual)
性的対象が向く性がわからないクエスチョニング
Questioning)
(恋愛感情を抱くこともあるが)
性的感情を抱かない
ノンセクシュアル※2
※1 ホモセクシュアル(homosexual)は同性愛者の総称です。
※2 日本独自の表記です。「ノンセクシュアル = ロマンティック・アセクシュアル」

性的指向】は大きく分けると上記のような分類になります。

ホモセクシュアル(同性愛)は同性愛者の総称です。そのなかで「女性の同性愛者」をレズビアン(Lesbian)、「男性の同性愛者」をゲイ(Gay)と呼称します。

注意が必要なのが男性の同性愛者を『ホモ』、女性の同性愛者を『レズ』と呼ぶのは蔑称にあたるので(差別用語になる場合がある)、男性の同性愛者は『ゲイ』、女性の同性愛者は『レズビアン』と正しい呼称で呼びましょう。

日本での「アセクシュアル」の一般的な解釈では、他者に恋愛感情や性的感情が向かない(恋愛感情・性的感情の対象がない)方の呼称として定着しています。

また、「恋愛感情はあるが性的感情がない」など、恋愛的指向と性的指向が一致しない場合、「〇〇ロマンティック・〇〇セクシュアル」と併記される場合もあります。

アセクシュアルで誤解を招きやすいのが、『アセクシュアル=人を好きにならない』と思われがちですが、アセクシュアルの方は性的感情(恋愛感情)が他者に向かない」「性的感情(恋愛感情)の対象がない」だけで、「人間として好き」という尊敬や敬愛的な感情(好き)はあります。また、「恋愛感情だけ無い」「性的感情だけ無い」場合もあり、「好き」の感情がない訳ではありません。

アセクシュアルの方の中には、「性的なこと自体に嫌悪感を持つ」方もいれば、「性的欲求はあるが、それが他者に向くことはない(性的欲求はあるが他者との性行為は望まない)」方もいるようです。

恋愛的指向(Romantic orientation)とは

恋愛的指向は「恋愛対象(恋愛感情)がどの性に向いているか」を示す概念です。

この概念は「恋愛的指向(恋愛感情がどの性に向くか)」だけの定義(性的感情は含まない定義)となり、概念自体あまり浸透していない為に、現在は性的指向の一部としての概念にとどまっています。

性的指向での、性的対象と恋愛対象が一致しない場合に表記される場合があります。

恋愛指向は、生物学的な性(体の性)とは関係がありません。

【恋愛指向】分類上の名称
恋愛感情を
異性に
いだ
ヘテロロマンティック
(Heteroromantic)
恋愛感情を
同性いだ
ホモロマンティック
(Homoromantic)
恋愛感情を
女性に”だけ”いだ
(性自認を問わず)
ウーマロマンティック
(Womaromantic)
ガイネロマンティック
(Gynoromantic)
ジニロマンティック
(Giniromantic)
恋愛感情を
男性に”だけ”いだ
(性自認を問わず)
マロマンティック
(Maromantic)
アンドロロマンティック
(Androromantic)
恋愛感情を男性・女性の
両性いだ
バイロマンティック
(Biromantic)
恋愛感情を男性や女性にとらわれず
すべての人いだ
パンロマンティック
(Panromantic)
自分から恋愛感情は抱くが
相手からの恋愛感情は望まない
リスロマンティック
(Lithromantic)
恋愛感情をいだかない※1アロマンティック
エイロマンティック
(Aromantic)
恋愛感情をいだく場合もあるが
頻度が少なかったり、想いがさほど強くない場合※2
グレーロマンティック
(Grayromantic)
一般的には恋愛感情はいだかないが
情緒的・心情的に強く結びついた相手に対してのみ恋愛感情をいだ※3
デミロマンティック
(Demiromantic)
恋愛感情が向く性がわからない
恋愛感情があるかわからない
クエスチョニング
(Questioning)
※1 対義語がロマンティック(romantic)→恋愛感情を抱(いだ)く人
※2 ロマンティックとアロマンティックの中間、指向というよりは強度・深度的な概念
※3 グレーロマンティックの内の一つの指向

例 体の性:女性、性自認:女性(シスジェンダー女性)の場合

  • 恋愛感情も性的感情も抱かない
    「シスジェンダー女性・アセクシュアル」
  • 恋愛対象は女性だが性的感情は抱かない
    「シスジェンダー女性・ホモロマンティック・アセクシュアル」
  • 恋愛感情はないが性的対象は異性
    「シスジェンダー女性・アロマンティック・ヘテロセクシュアル」

例 体の性:男性、性自認:男性(シスジェンダー男性)の場合

  • 恋愛対象は女性だが性的感情がない
    (シスジェンダー男性・ヘテロロマンティック・アセクシュアル)
  • 恋愛感情はないが性的対象は異性
    (シスジェンダー男性・アロマンティック・ヘテロセクシュアル)
  • 恋愛対象は女性だが性的対象は両性
    (シスジェンダー男性・ヘテロロマンティック・バイセクシュアル)

まとめ

まとめようかと思いましたが上記で説明しつくした感があるので書く事がないです。

なので、

これだけは言っておきたい「性的指向」と「性的嗜好」の大きな違い

シス男性ヘテロセクシュアル(ストレート男性)に「男性を(恋愛的・性愛的に)好きになれ」と言っても好きにはなれません。だって性的指向が「異性(ヘテロセクシュアル)」ですから。

ゲイの人に「女性を(恋愛的・性愛的に)好きになれ」と言っても好きにはなれません。だって性的指向が「同性(男性)」ですから。

レズビアンの人に「男性を(恋愛的・性愛的に)好きになれ」と言っても好きにはなれません。だって性的指向が「同性(女性)」ですから。

僕の個人的な話だと、尊敬できるとか人間的・人格的に優れている人はLGBTQ+とかそんなの関係なしで「人間的に好きです」。ですが恋愛的・性的な感情となると性的指向「ヘテロセクシュアル(異性愛)」なので同性やトランスの方は恋愛対象になりません。一瞬「シス女性バイセクシュアル」とか「FtXパンセクシュアル」の方ならOKなのか?とも考えましたが、今までそのような事象に触れたことがないのでその時にならないとわからないです。

なぜこんなに「性的指向せいてきしこう」を連呼しているかと言うと、「指向」と「嗜好」の大きな違いを知ってほしいからです。

性的指向(sexual orientation)の指向とは

指向性スピーカーとか指向性マイクとかの単語は聞いたことはないでしょうか? 
「指向性スピーカー」は音の広がり少なく「決まった方向の狭い範囲のみ」聞こえるスピーカーです。「指向性マイク」は「決まった方向の狭い範囲の音」しか拾わないマイクです。

指向とは「向く方向」が決まっているという意味です。

「異性が好き」「同性が好き」「男性も女性も好き」「どんな性でも好きになったら問題なし」といった性的指向』は「方位磁石のようなもの」で、ずっと同じ方向を指し続けます
指す方向(好きになる性)は気が付いた時には決まっていますから変えようと思っても変えられるものではないのです。

ただ、セクシュアリティの変遷も「ある」と聞いたことがあります。

ここからは僕は当事者ではないので想像の域を出ませんが、途中で変遷がある場合、自分が意識しない「クエスチョニング」の時期があり、いろいろ回り道をした結果が「今現在の自分のセクシュアリティ(性的指向)」ではないか考えます。
「変遷(時間とともに移り変わる)」と言うより「本来の場所にたどり着いた」という感じですかね。

性的嗜好(sexual preference)の嗜好とは

嗜好しこうは辞書を引くと『たしなむこと・好み』と出てきます。辞書の違いで多少ニュアンスの違いは発生しますが「嗜好しこうこのみ」だと思ってもらって相違ないです。

では性的嗜好とはなにかと言うことですが、簡単に言えば「何で性的興奮があるか(得るか)」と言う事です。

具体的には「〇〇フェチ」であったり、「サディズム・マゾヒズム(SM)」「パートナー交換(スワッピング)」「野外性交」「露出癖」「ペドフェリア(小児性愛)」「ロリコン」etc. など性的嗜好は多岐にわたります。

「ペドフェリア(小児性愛)」「ロリコン」などは個人的には反吐が出るほど嫌いなので完全否定ですが(ここは批判されても結構)、性的嗜好に関しては、

  1. 「法を犯さない」
  2. 「人に迷惑をかけない(他人の権利を侵害しない)」
  3. 「プレイとして双方合意がある」

などを前提として「個人の中で完結できれば」(好き嫌いは別にして)否定することはできないとも考えます。適用条件※1を満たせばあくまで個人の趣味・好みですから

※1 赤ベコ3が勝手に考える適用条件です。

ただ性的嗜好に関しては、「法に触れる・人に迷惑をかける」等の「行為・行動」も少なからずあるので一概に是認はできないです。

性的指向と性的嗜好の違い

上記を踏まえると「性的指向」と「性的嗜好」の大きな違いがわかってった頂けたと思います。

セクシュアリティ(自分の性のあり方)の構成要素に「性的指向(orientation)〔好きになる性〕」があるのは性的要素だけではなく恋愛的要素を含むからです。「ゲイ」「レズビアン」「バイセクシュアル」「アセクシュアル」「パンセクシュアル」等の『性的指向』は、自分で選んだことではなく、物心ついたらそうだっただけで、言ってみれば左利きとなんら変わりないことなのです。

セクシュアリティにおける「せいてきしこう」は『性的指向』です。

もし言葉の深い意味を知らずに「嗜好」使っていた方は、早めに修正することをお勧めします。

「自分らしく、それでいい」

Akabeko3

別記事:【セクシュアリティ】 とは
別記事:セクシュアリティの構成要素 1【生物学的性】
別記事:セクシュアリティの構成要素 2【性自認】
この記事:セクシュアリティの構成要素 3【性的指向】
別記事:セクシュアリティの構成要素 4【性表現】【ジェンダー役割】

追伸

  • 「説明が間違ってるよー」
  • 「ここもうちょっと説明が足りない」
  • 「誤認あるよー」
  • 「解釈が違っている」等

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